2011年6月 5日 (日)

新宿鮫Ⅹ「絆回廊」を読む

大沢在昌さんの新宿鮫シリーズ最新刊(10)「絆回廊」(光文社)を読みました。

シリーズ5年ぶりという久しぶりの長編。「ほぼ日刊イトイ新聞」で連載するという新形態でも話題になったようですが、まあ、安定した内容で、面白く読めました。

「新宿鮫」こと新宿署の鮫島警部が造形されたのが1990年。それから20年以上という長期にわたるシリーズですから、作者にはいろいろと苦労があるのだろうなあと思います。物語の内容そのものは別にして、やはりその辺りが気になりました(笑)

(以下、若干内容に触れますので、未読の方はご注意ください)

手元に実物がないのですが、ウイキペディアによると、第一作(1990年)時の鮫島の年齢は36歳、恋人の青木晶は14歳下の22歳のようです。↓

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%B0%E5%AE%BF%E9%AE%AB%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BA

新宿鮫シリーズは、同時代の時代風俗や犯罪傾向などを巧みに取り入れているのが魅力の1つですから、描かれているのは常に「現代」です。

今回の「絆回廊」もガールズバーが出てきたりして、作者の「取材」成果(?)が生かされているなあと(笑)思います。また、明示的に時代を表している箇所もあり(暴力団須動会が解散したのが平成8年。それから14年後の話)、描かれているのは平成22年、つまり昨年2010年のことです。

さて、ここが問題です。もし、第一作の舞台設定が発表時の1990年だったとしたら、何と! 鮫島の年齢は56歳!晶は42歳!になっているのですねえ。

42歳の晶のイメージをつかむため(笑)、ざっと1968年生まれの芸能人を検索してみたところ(何をしとるねん)、chara。ふむ、ちょっとやせすぎかな?

 飯島直子。なるほど。杉本彩。ちょっとエロすぎ? 演歌ですが長山洋子。ちなみに勝間和代さんも同い年でした(笑)

 というわけで、今回の「絆回廊」、晶さんがあまり登場しないのは(鮫島とは電話だけで、結局会わずじまい)そんな年齢の都合もあるのかなあと勝手におもったり。

 決定的な矛盾は桃井課長の年齢。先のウィキペディアによると、第1作では52歳だったそうですが、今回ははっきり年齢が出ていて58歳。なんと!20年間で6歳しか年を取っていない!

とまあ、揚げ足取りのようなことを書いているわけですが、やはり長期の人気シリーズはつらいですねえ。鮫島の外見などの描写もどんどんなくなっているし、もちろん晶も。読者が勝手に抱いているイメージを壊さないようにするため、苦労されているんだなあと思います。

 作者は糸井重里さんとの対談で「今回はけりをつけなくてはいけないことがある」との趣旨の発言をしておられて、↓ これが晶との件なのか(私はこちらと推測)、桃井課長の矛盾の解消なのか、どちらとも取れるような気もします。

 今回の「絆回廊」の終わり方は、次もあるような感じでしたので、今回で終わってしまわないとは思います。ただ、4年以上たってしまうと、鮫島は60歳で定年退職になるので、どうするのでしょうか。ある時点で時を止めると、同時代性の魅力がなくなるし。ほんとうに大変だろうなあと思いながら、次作を楽しみに待つことにしましょう。

 http://www.1101.com/oosawa/2010-02-18.html

2011年5月 6日 (金)

続ウィキリークスと朝日新聞

 ウィキリークスからアメリカの公電の提供を受けた朝日新聞。さあ、きょうはどんな記事が・・・と新聞を見たのですが、あれ、ないですね。

 サイトでは公電の全文訳を載せているようです。↓

 http://www.asahi.com/special/wikileaks/

 ちなみに、ウィキリークス本体も4日は日本関連の公電を掲載しています↓

 http://wikileaks.ch/reldate/2011-05-04_0.html     

 

 ただ5日は日本関連はなし。だから朝日もないのかな?(逆か?)まあ、こうやって歩調を合わせていくんでしょうかね。そうすると、6日は新聞休刊日だから、本体の方の掲載もなしですか。(恐らく) まあ、双方がよく連絡を取り合っているだろうことは推測できます。

 本日、他の新聞もざっと見てみましたが、公電関連記事は、ニューヨークタイムズを引用する形での報道です。共同通信が、朝日には載っていないキャンベル・山岡会談などを要旨で報じていました。これを朝日が掲載しないのは、「精査」して選択したからなのか、あるいは山岡氏のコメントが取れなかったのか。「小沢氏は中国では歓待されたが、米政府は同様の対応をとらなかった」とか「小沢氏は鳩山氏の次の首相となる可能性は高い」とか、なかなか面白い発言はあるのですが、まあ報じる価値はないと判断したのかもしれません。

 地元・沖縄はどうかと沖縄タイムズをのぞいたら「独自に入手」とあり、少し驚きました。  

 http://www.okinawatimes.co.jp/article/2011-05-05_17409/

 ウィキリークスは沖縄タイムズにも提供したのでしょうか?今後の同紙も少し注目です。

 朝日とウィキリークスの関係では、ツイッターで、細谷雄一・慶応大学准教授(@yuichihosoya)が批判していたのが目に付きました。反米的なイデオロギーに基づき「アメリカは隠れて悪いことをしている」「日本政府は国民をだましている」という印象を与えるだけだと。

 また民主党の原口一博衆院議員は、私が昨日「興味深い」と書いた官僚の「妥協しないほうがいい」などの発言について、ツイッターで「内憂外患罪があればこの密告屋は極刑」と刺激的なコメントをされていました。

 あと、意外だったのが上杉隆氏らフリージャーナリストの方からの反応がなかったこと(私が見落としているだけかもしれません)。ウィキリークスについての著書もあるし、結構「ウィキリークス万歳」的な価値観の方なのかなあと推測していたので何か解説的な一言があるかと思っていました。

 話は変わりますが、毎日新聞の震災「検証」シリーズは読み応えがありますね。

 今回は計画停電。http://mainichi.jp/select/weathernews/20110311/news/20110505k0000e04000100

 一歩間違えば、大変な惨事が起きていた可能性があったことを伝えました。医療、交通、工場での生産などなど、いかに私達の生活が電気に依存しているか。それが突然供給されなくなると、どんなに混乱するのか。大変深く考えさせられる内容でした。

 上述の上杉氏が「計画停電は原発事故を隠蔽するための陰謀」という趣旨の記事を書いていたような記憶がありますが、やはりそれは違うのではないか。そんなことも感じました。その日には無理かもしれないけれど、時間をかけて事象を検証する。素晴らしい仕事ではないかと思います。今後も期待しています。

   

 

 

2011年5月 4日 (水)

ウィキリークス入手の公電を朝日新聞が報じる

 内部告発サイト・ウィキリークスが入手したアメリカ政府の外交公電のうち、日本関係の約7000本を朝日新聞に提供。4日付けの朝日が、それをもとに「米軍グアム移転費粉飾」と、1面で大々的に報道しています。

 http://www.asahi.com/special/wikileaks/TKY201105030472.html

 ウィキリークスは昨年、イギリスのガーディアン、アメリカのニューヨークタイムズ、フランスのルモンド、スペインのエルパイスの各新聞と、ドイツの週刊誌シュピーゲルに公電を提供。一斉に報道させ、既存メディアと「協力」する姿勢を示していました。

 結局、日本のメディアでは朝日新聞に提供することを決めたことが本日判明したわけで、今後、提供を受けた公電を基にした報道が続いていくのでしょう。

 まず興味をひかれるのは、朝日とウィキリークスがどのような経緯で合意に至ったかということですが、本日の朝日を読む限りでははっきりしません。

 「1月に提供を受け、3ヶ月あまりかけて分析した」とあり、今年はじめに実施した創設者のアサンジュ氏のインタビューも掲載されているので、このころなのだろうか、と推測するだけです。

 朝日が働きかけたのか、ウィキリークス側から話があったのか。ゼネラルエディター・西村陽一氏の署名記事の中には、公電の信憑性の確認にあたっては、ニューヨークタイムズの協力を得た、ともあるので、この線から働きかけたのか。いろいろと想像は膨らみますが、経緯は不明です。ぜひ、朝日にはそのあたりのことも紙面化してもらいたいところです。

 ウィキリークスから提供を受けることは、日本の他の新聞社も狙っていたのではないのかとも想像します。結局、朝日が「日本を代表するメディア」と判断されてしまったわけですから、悔しいでしょうね。今日、検索した限りでは、「ウィキリークスが入手した公電を基に朝日新聞が報じた」と速報している他の新聞社はなさそうです。

 共同通信が「ニューヨークタイムズが報じた」というスタイルで↓

http://www.47news.jp/CN/201105/CN2011050401000630.html

このほか、産経が菅首相のコメントを↓

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110504/plc11050422150012-n1.htm

まあ、明日の新聞を見てみないと分かりませんが、外国の新聞なら「○○紙によると」で報じるのだから、やってもよいと思うのですが、そこはやはり意地があるのかもしれません。

 さて、肝心の報じられている中身ですが、ツイッターなどを見ると1面の記事については「知ってた」という声もあり、詳しい人にとってはさほど新味のある内容ではないのかもしれません。しかし、政府の「ごまかし」が、アメリカの公電という形で裏付けられたわけで、沖縄県民は反発するでしょう。震災対応で苦慮している政権にとっては、沖縄への対応というさらに頭の痛い問題も抱えるわけです。まあ、報道を「相手にしない」というやり方もあり、現に首相はそうコメントしているわけですが、果たしてそれで済むのか。今後が注目ですね。

 私自身は見開き紙面の方で紹介されている外務・防衛官僚の発言が興味深かった。「民主党は愚か」とか「米国政府は譲歩するな」とか、まあ自分達のやっていることが正しいと思っているのでしょうが、これでは何処の国の官僚なんだと思われてしまいます。

 民主党のいう「政治主導」は本当に大変だなあと感じますが、これで政治家と官僚の間がさらにぎくしゃくしないか、心配になります。

 記事によると、自民党の政治家の皆さんもひどいし、民主党もだめ。こういうのを読まされると、じゃあ国民としては、だれを信用すればいいのか、とどうしても思ってしまいます。

 さきほども書きましたが、今後も朝日は公電を基に報道していくでしょう。私は小沢一郎氏がらみの記事が出ると予想しているのですが、ただでさえ震災で政府不信になっているところに、さらに上塗りするような内容になることが予想されます。やれやれとしかいいようがないのが辛いですね。

2011年4月24日 (日)

記者会見締め出し?

 これまで東京電力、原子力・安全保安院が個別に行ってきた記者会見を、25日から福島原子力発電所事故対策本部として一本化することになったそうです。

 これに際し、出席資格を限定したことが「一部フリージャーナリストの締め出しではないか」と問題になっているようです。↓

 http://www.nisa.meti.go.jp/oshirase/2011/230423-2.html

 実際にどの程度締め出しになるのかどうかは私には判断できませんが、出席者にある種の資格を要求するのは、ある程度やむを得ないのではないか、と思います。部屋の広さなどの問題もあるでしょうし、誰でもオーケーとはいかないとも思います。

 ただ、その代わり、といっては何ですが、対策本部側が会見の一部始終をustなどで流すべきだと思います。これまでフリーの方たちがやってきたことを、本部側が積極的にやればいいのではないでしょうか。

 今回の震災では、政府や自治体はもとより、自衛隊や在日米軍などこれまであまり目にする機会のなかった機関までもがツイッターなどを使って直接情報発信していたのが、結構驚きでした。また、東大の早野先生をはじめ、各種の専門家による発信も、情報を吟味する上で、大変貴重だったと思います。

 そういう時代なのですから、統合本部も記者会見の現場そのものを直接発信してしまえばいいのです。顔色を変えたり、いいよどんだりする場面が流れれば、見ている人は「おかしい?」と思うでしょうし、いいかげんな情報は専門家からすぐにつっこみが入ります。また、変な質問しかできない記者は、見ている人からバカにされる訳です。

 今回、震災関係の記者会見を見ていて思ったのは、大手の新聞・テレビの記者達は「この会見そのものを多くの国民が見ている」という意識が薄いのでは、ということでした。そういう面では、フリーの人たちの方が一枚上手です。明らかに見ている人を意識していますよね(どんな情報を引き出しているかは別として・・・・)

 以前、知り合いの新聞記者に聞いたことがあるのですが、彼らは「記者会見はセレモニーにすぎない」と思っているふしがあります。彼らは記者生活のスタートを警察記者として始める例が多いのですが、警察というのは、重要な情報は会見では出てこないそうです。

 このため、会見では当たり障りのないやり取りで終わっておいて、勝負は「夜討ち朝駆け」で警察官と1対1になって・・・・・・というやり方が染み付いていきます。

 ところが、記者会見の場面すべてが「だだ漏れ」されるような時代、こういう習性は裏目にでているのではないでしょうか。記者会見を見ている人は「政府の言いっぱなし」「だれも鋭い質問をしない」と感じ、「情報を取っているのはフリーばかり。だから既存メディアの記者はダメなんだ」と言われる一因になっているような気がします。

 先日の毎日新聞の自衛隊をめぐるドキュメントを読んだ方も多いと思います。この記事は、地道な取材を積み重ねた素晴らしい内容で、これが記者会見を取材しているだけでは、到底生まれないことは分かります。http://mainichi.jp/select/weathernews/20110311/archive/news/2011/04/22/20110422k0000m010182000c.html

 それだけに、既存メディアの皆さんも、もう少し「記者会見も多くの国民が見ている」という意識を強めて(別にスタンドプレーをしろ、というわけではありませんが)、頑張っていただけたらなあと思います。